現在、水供給事業が行われているエチオピア南部の村は標高3000mの山の上。圧倒的に物資も技術も限られているこの事業地で、長期的に利用できる水供給システムを建設するため、ホープスタッフは日々工夫と努力を重ねてきました。なるべく現地調達できる資材を使うこと、故障してもすぐに直せるシンプルな構造にすること、住民にも建設に参加してもらい構造を理解してもらうことなど、その積み重ねが持続可能な事業を支えてきました。ここでエチオピアでの事業を継続させるための5つの秘訣をご紹介します。


ホープ・エチオピアスタッフのマカデス。事業地に滞在し衛生教育を行っています。

① それぞれの事業地にそれぞれのシステム設計

スタッフの1人であるファタナは、ホープ・インターナショナル開発機構のエチオピア事務所で水供給システムの設計を担当している専門技師です。彼の仕事は事業地で源泉を探すことから始まります。水質や水量を調査した後に源泉は保護され、そこから貯水タンクを経て、ふもとの村まで重力だけで水を流す。これがシステムの大まかな仕組みです。しかし源泉の標高や水量、村までの距離や地形は事業地によってさまざまです。ファタナは住民などに聞き込みをしながら、それぞれの村にとって最善のシステム設計を心がけています。


現地住民と一緒に畑を歩く、ホープ・エチオピアスタッフのエルミアスとファタナ。

② 建設作業は共同作業 〜住民の協力の重要性〜

給水システムの設計図ができると、いよいよ資材の運搬です。事業地までの山道は険しく、ホープの熟練ドライバーの腕を持ってしても、事務所から訳26km先の事業地まで平均3時間ほどかかります。さらに、村に近づくほど道は狭くなり、車が安全に通れない地域も増えていくため、ホープは必ず住民に道の整備をお願いしてきました。道幅を拡げ、川に橋をかけ、住民は何ヶ月も前から準備を始めてくれています。事業が始まってからも資材の運搬や、パイプを埋める溝掘りなど、多くの場面で住民が協力しています。この協力体制があるからこそ、住民の事業への関心も深まり事業後の維持管理も積極的に行われるようになるのです。


女性たちも率先してコンクリート作りを手伝います。

③ 水供給システムの仕組みと工夫

ホープの建設する水供給システムは大きく分けて 1)源泉保護キャップ 、2)貯水タンク 、3)給水所 の3つから成り立っています。

1)源泉保護キャップ

発見された源泉には、砂利や砂による3層のろ過フィルターが敷き詰められ、重たいフタで密閉します。源泉の定期清掃は、源泉から伸びる3本のパイプのうち、貯水タンクへ続くメインパイプと保護キャップ内でいっぱいになった水を逃がすオーバーフローパイプが閉められ、代わりに清掃用パイプを解放することで清掃時の汚れた水がメインパイプへ流れない仕組みになっています。


源泉にて。ウォーターエンジニアのファタナ。 

2)貯水タンク

水量と水圧を安定させる重要な設備である貯水タンクは、源泉の大きさや給水所の数によってサイズや設置数が異なります。ここにも源泉保護キャップと同じように3本のパイプが設置されており、現地住民が定期的に清掃します。

3)給水所

水供給システムの花形とも言える給水所ですが、無作為に設置しているわけではありません。ホープでは「事業対象の家庭が往復15分以内で水汲みができるようになること」を基準にシステムの設計を行なっています。安全な水が手に入るようになっても、給水所が家から遠かったり崖の上にあると、10~25Lのタンクを持って水を汲みに来る住民の負担解消にならないからです。
システム設計の責任者であるファタナは、住民や行政役場の人々と事業地を歩きながら地形や人口密集地を確認し、給水所の個数や場所を決めています。


④ 建設作業だけじゃない「意識改革」の重要性

安全な水が手に入っても、住民が「なぜ安全な水が大切なのか」を理解していなければ、事業の効果は見込めません。事業を行っている僻地の村では衛生教育制度やインフラが整っておらず、日本では当たり前に知られている手洗いやトイレの使用などの衛生習慣が根付いていません。コミュニティーモービライザーと呼ばれるスタッフは事業地に2年間滞在し、現地住民の衛生習慣に対する意識を変えるため、正しい保健衛生の知識や習慣を伝えます。長年の習慣を変えるにはお互い信頼関係を築き、定着するまで繰り返し伝えることが重要です。


コミュニティーモビライザーのエルミアス。住民への衛生教育も行います。

⑤ 住民に「オーナーシップ」を持ってもらう

少し聞きなれないこの言葉は、住民が水供給システムを自分たちの所有物として認識し、自らの手で責任を持って維持管理していこうとする意識のことです。事業後も給水システムが長持ちするかどうかは、このオーナーシップにかかっているのです。
ホープはオーナーシップを育てるため、「住民参加型の事業」を心がけてきました。例えば、建設工事には住民から選抜された10~15人が同行し、パイプの設置や修理方法などを建設のプロから直接学んでいます。彼らはメンテナンスチームとして、事業終了後も自力で修理できるようになるために必要な技術を1年かけて習得します。また住民により水管理委員会も作られ、給水所の利用に関するルール作りや水利用料金の徴収などを行なっています。料金を払うのかと意外に思われるかもしれませんが、今後パイプや蛇口を買い替える必要が出た時のための予算を自ら確保することは大切なことなのです。


住民によって組織されたメンテナンスチームが給水所の建設をリードします。

ホープではこのような委員会への女性参加を促進しています。村では未だに女性の社会的地位が低く、自分の意見を発表できる機会はほとんどありません。しかし水汲みは女性の仕事。女性の意見を反映せずに水事業の成功はあり得ません。女性の意見も尊重するよう、ここでも意識改革が行われています。

日本とエチオピア、共に作り上げる事業

このようにホープの事業はホープスタッフと現地住民の「協働」によって成り立っています。
同時にホープはスポンサーとなってくださる皆さまとの「協働」も大切にしてまいりました。
支援したいという皆さまの想いが、エチオピア南部の村まで確実に届くように、これからもホープは活動を続けてまいります。私たちは現在、エチオピア南部クタ郡の住民4716人に安全な水を届ける事業を行なっています。クタの住民をはじめ、支援を待っているたくさんの人々が1日も早く安全な水のある生活が送れるよう、皆さまのあたたかいご支援をよろしくお願いいたします。