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世界保健デーに改めて考える「5.8秒」という数字

HOPE-JP • Apr 16, 2019

5.8秒にひとりーー

ユニセフは2018年の報告書にて、年間540万人の子どもが5歳を迎える前に亡くなっていると発表しました。
これは1日に約1万5,000人、およそ5.8秒にひとりが命を落としている計算になります。この25年で大きく改善されましたが、未だに5歳未満児が亡くなる原因の多くが、安全な水や正しい保健衛生知識、ワクチンがあれば防ぐことができるものといわれています。

4月7日は国連によって制定された「世界保健デー」です。この機会にもう一度世界の実情に目を向け、またその問題に対するホープの取り組みをご紹介いたします。


ホープ事業地、エチオピアの現状

ホープが活動している国のひとつがエチオピア連邦民主共和国です。
急激な経済発展に注目が集まっていますが、一方で拡大する貧富の格差が大きな社会問題となっています。

HOPE intervention site in Ethiopia

都市部では95%以上の家庭に安全な水が供給されていますが、農村部では未だに45%近い住民、およそ3900万人の人々が汚染の危険がある水を使用しています。トイレが整備されていない地域も多く、未だに国民の3人に1人 (32.9%) は林などの屋外で排泄している現状です。 不衛生な生活環境により病気になっても、僻地には薬の備蓄や設備が十分な診療所が少なく、救えるはずの命が失われている悲しい現実があります。実際に5歳未満で亡くなる子どもの死因のほとんどは、予防あるいは治療可能な、出産時の合併症、肺炎、下痢、またはマラリアなどといわれています。

手軽に医療サービスを受けられる日本とは異なり、僻地の村では「正しい保健衛生知識を身につけ病気を未然に防ぐ」ことが何よりも重要なのです。

ホープにできること

ホープはこの問題を解決するため、安全な水の供給に取り組んでいます。安全な飲み水は下痢症などの病気を防ぐために不可欠です。しかし、その水を飲む手やコップが汚れていたら、衛生的なトイレがなかったら、手洗いの習慣がなかったら、せっかく安全な水があっても健康被害を止めることはできません。

そこで、ホープは水事業と並行して正しい保健衛生知識を伝えることにも重点を置いています。

1. お母さんへの保健衛生研修:

水起因の病気により命の危険に晒されるのは特に小さな子どもたちです。しかしホープが日常的に子どもたちを指導することは難しいため、子育てをしているお母さんたちに保健衛生知識を伝えています。

保健衛生教育

保健衛生教育

2. 戸別訪問によるフォローアップ:

研修で学んだことを各家庭で実践できているかのフォローアップもホープの大切な役目です。実践できていなければ何が原因なのか、村人に寄り添って共に考えます。

戸別訪問

戸別訪問

3. 家庭用トイレの設置:

ホープは現地にある資材で簡単に作れる、家庭用簡易トイレの普及を推進しています。写真はムンツォさん一家と新しく作ったトイレです。ホープが事業を始めるまで、この家庭にトイレはなく畑の先にある竹林で用をたしていました。

家庭用簡易トイレ

家庭用簡易トイレ

ムンツォさん「竹林まで行くのに畑を横切るので、雨季にはトイレに行くのが大変でした。外で用をたすことが悪いとは思っていませんでしたが、それが原因で衛生状態が悪くなり、病気にかかるかもしれないとホープの研修で学びました。今では新しいトイレの前に手洗い用の水も用意し、母親の私が毎日掃除しているから、ほらトイレの中もきれいでしょ?」

4. 食器乾燥棚の設置:

事業地では、食器類を適切に管理できるよう、簡単に手に入る資材を使った食器乾燥棚の作り方も指導しています。1枚目の写真はホープが推奨する乾燥棚を利用しているオイノさんとアスフォさんご夫妻です。

食器乾燥棚

食器乾燥棚

オイノさん「事業が始まるまで食器はその辺の芝生に置いて乾かしていました。当時はみんなそうしていましたよ。でも、それではせっかく洗った食器に泥や病原菌がついたり、家畜に汚されるとホープスタッフに教えられ、夫に頼んでこの食器棚を作ってもらいました。すぐ作れましたし、とても便利ですよ。」

5. 手洗い指導:

エチオピアでは手で食事をする文化があるため、手をきれいにすることが重要です。特に免疫力の弱い子ども達にもわかりやすく手洗いの大切さを伝えられるよう、JICA青年海外協力隊と協力して手洗い講習を行いました。正しい手洗い方法を覚えるための「手洗いソング」も現地の部族語で作成し、手洗い習慣が定着するよう努力しています。

手洗い指導

手洗い指導

ホープ事業が終わった後は…

ホープスタッフもいつまでも現地にいられるわけではありません。そのため、2年の事業が終わった後も継続して保健衛生知識が伝えられていくよう、現地の診療所と連携が重要です。情報を共有し研修に参加してもらうなど、連携体制を築いています。

僻地の診療所は設備や薬不足のため十分な医療行為が行えないことがありますが、現在、世界保健機関(WHO)は「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ (UHC)」というテーマのもと「誰もがどこでも保健医療を受けられる社会」の実現を目指しています。その甲斐あってか、事業地近くのカシャソ診療所では今月(4月)から設備や医療スタッフが補充され、水起因の病気にも対応できる医薬品や出産に必要な医療器具が新たに導入されました。

ケチャセンガ診療所

ケチャセンガ診療所

カシャソ診療所

カシャソ診療所

僻地のこの村でも「5.8秒」という数字を改善しようと多くの人々が日々努力しています。事業が終了しホープが撤退しても、住民が地元行政と共に問題に立ち向かうことができるよう、ホープがその礎を築くお手伝いをしています。

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