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感染症から命を守るティッピータップとは

HOPE-JP • May 12, 2020

ティッピータップとは?

かわいらしくキャッチーな響きから、ダンスやゲームを連想しそうですが、実はこれはアフリカを中心に使用されている「簡易手洗い装置」の呼び名です。ティッピーは「傾きやすい」、タップは「蛇口」を意味し、水の入ったポリタンクを文字通り「傾けて」水を出すという、てこの原理を応用したシンプルな装置です。発明されたのはなんと1980年代。以降、ティッピータップは長きにわたって水道の無い途上国などで衛生環境の改善に貢献してきました。

費用をかけず簡単に作れるティッピータップ

材料は水汲みに使うポリタンク、竹や木の枝、長めの紐のみです。ポリタンクは通常どの家庭にもあるので、費用はほとんどかかりません。
作り方もとても簡単です。先が二股の竹や木の枝を2本地面に立てて支柱にし、そこにもう一本の枝を物干し竿のように渡します。その枝にポリタンクの持ち手を通し、蓋をした注ぎ口に紐を結んで地面近くまで垂らし、先にはペダルとなる枝を結びます。ペダルを踏むとタンクが傾き、タンクに小さく開けられた穴から水が出ます。
費用もかからず特別な技術も必要のないティッピータップは、どのような家庭でも簡単に導入することができるため、普及しやすい利点があります。

エコな救世主

日本では水道から出る水で両手を同時に洗うのは普通のことですが、家庭に水道のない途上国ではポリタンクに水を汲み、タンクから水を出しながら直接洗うか、水差しを使います。それでは片手がふさがり、上手に汚れは落とせません。手についたウィルスや細菌を洗い流すためには、両手をこすり合わせて洗うことはとても重要です。ティッピータップを使えば両手を同時に洗え、しかもどこにも触らず手洗いができるので、感染を予防し命を守ることができます。まさに途上国の救世主です。
また、ティッピータップのタンクにあけた小さな穴からは水が少しずつ出るため、少量で手洗いができます。節水のためにペダルから足を離し、水を止めることも簡単です。

ホープとティッピータップ

ホープはエチオピア南部の僻地の村々で、簡易水道の建設だけでなく保健衛生教育も併せて行っています。事業地の村のように簡単に水が手に入らない地域では、もともと手を洗う習慣がないため、手洗い指導は必須です。簡易水道の建設工事が始まると、現地在住の保健衛生担当者たちが各家庭を訪問し、手洗いの大切さを伝えると共にティッピータップの導入を勧めます。ティッピータップを使って簡単に手洗いができるようになると、手洗いの習慣が根付いていきます。

エチオピアの村人たちの保健衛生に対する意識の変化

以前は川や水たまりの水で、顔や手を洗うこともあったエチオピア南部ボンケ地区の住民たち。簡易水道が完成し安全な水が使えるようになると、不衛生な水で体調を崩していた人々も元気になりました。さらにティッピータップのおかげで手洗いが楽になると、食事の前やトイレの後にも手を洗うようになり、コレラや腸チフスなどの感染症にかかりにくくなりました。
手洗いの重要性を理解すると、保健衛生に対する意識が高まる効果もあります。住民たちは、草むらなどでの排泄をやめて家庭にトイレを設置するようになり、食器を地面に置いて乾かしていたのを、食器棚を作って乾かすようになりました。また、ある家庭では、衛生環境を改善したことで医療費が減り、家計を助けるという二次的な効果も見られています。

小さな取り組みも大きな変化をもたらす

現地住民の少しの意識の変化が彼らの生活を大きく改善することを、私たちは何度も目の当たりにしてきました。同じように、一人一人の小さな支援も遠いエチオピアの村々に大きな変化を起こすことができるのです。ホープの取り組みが、現地住民の衛生環境の改善、感染症の予防につながり、大きな生活の変化への助けになるよう、皆さまのあたたかいご支援をこれからもよろしくお願いいたします。
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