朝食を済ませると、駐在員としての仕事が始まります。山頂に近い水源まで事業の進み具合を確認しに行ったり、生活を調査するためにコミュニティーの家庭を一軒一軒訪問したりします。
山中の村での移動は起伏が激しく、まるでハイキングをしているようです。大きな岩がゴロゴロとした急坂に遭遇することもありますが、村の人々にとってはそんな急坂も生活道路です。タンクで水を運んでいる人や、市場で売るための農作物を背負っている人たちによく出会います。
びっくりするのは、滑りやすそうな薄いビニール製の靴で岩場をどんどん登る女性たち。トレッキングシューズを履いている私たちよりも速い!なんてたくましいのでしょう。立ち止まって私たちに向ける、彼女たちの大きな笑顔と明るいあいさつは、私にとって道中の励みであり、癒しになっています。
村の女性が履いている靴
仕事を終えて帰路につくころ、下校中の子どもたちを見かけます。教科書は学校から貸し出されるので持っておらず、代わりに水汲み用の小さな黄色いタンクを持っている子もちらほら。学校が終わると、家で使うための水を汲んで帰るのです。
写真を撮らせて!とお願いすると、照れて逃げてしまう子もいますが、積極的にポーズをとってくれる子も!どちらもかわいい!
宿泊地近くの空き地では、子どもたちがバレーボールやサッカーをして遊んでいます。
ボールは簡単に手に入らない貴重品なので、布の切れ端を丸めて作った代用ボールでサッカーに熱中する子どもたち。既製の道具がなければ、身近にあるもので工夫して作り、楽しむ姿に感心しました。
夕食前、宿泊地から歩いて3分の水源まで水を汲みに行くことが、村での私の日課です。毎日2Lのペットボトル2本に水を汲み、洗顔や歯磨き、飲料水として使います。調理用の水は別で用意されているため、1日3Lほどの水で足りることもあります。
村に滞在中は人目につかずに水を浴びる場所がないので体を洗えませんが、髪だけは3~4日に一度、ペットボトルに汲んだ水で洗います。村の人々は川で体を洗いますが、頻度はまちまちで1か月に1回くらいの人もいるようです。
私は1人分の水を汲むだけで済みますが、家族の多い家庭では、女性や子どもが1日の平均使用水量である約40Lの水を数回に分けて汲んでこなければなりません。
英語の表現に「in her shoes」という言葉があります。「彼女の靴を履いてみる」=「その人の立場になって考えてみる」という意味です。
実際に事業地の村に滞在し現地の生活に少しでも近い体験をすることは、電気や水道のない村の人々の生活や苦労を理解するために、大切なことではないでしょうか。
帰国後、水を使うときには村での生活を思い出し、自由に水を使えるありがたさと後ろめたさを同時に感じています。モノに頼り、壊れたら新しいモノがすぐ手に入る環境に甘えて生活している私も、彼らの知恵から学ぶことがたくさんあることに気づきました。
ホープ事業で建設している水供給設備は、村の人々の生活を安全で楽にすることが可能です。
村での貴重な生活体験を、事業に少しでも役立てていけたらと思っています。
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