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エチオピアの華やかな9月

木村 有希 • Oct 19, 2023

ごちそうは生肉?

ごちそうは生肉?

こんにちは。エチオピア・アディスアベバ駐在員の木村です。

エチオピアでは1年を通じて様々なお祭りがありますが、6月から始まった雨季がそろそろ終わりに近づく8月末から9月末は、エチオピアが最も華やかになる時期です。今回は、エチオピアの年末から新年にかけて行われた3つのお祭りの様子をお届けしたいと思います。

年に一度の女性のお祭りアシェンダ

8月下旬、アディスアベバの街中では、太鼓を叩きながら踊る女性グループの姿をあちらこちらに見かけます。エチオピア北部のティグライ州の伝統行事アシェンダ(Ashenda)です。アシェンダは、聖母マリアがエチオピアにやってきたことを称え、子孫繁栄を願うためのお祭りで、例年8月16日から26日に行われます。女性たちは皆、北部の伝統的な編み込みとウェーブの髪型に伝統衣装で着飾って、とても鮮やかで素敵です。アディスアベバ市内では、小さな太鼓を叩いて街中を練り歩きながら、出会った人(特に男性)を取り囲んで新年のお祝いのためにチップをもらう女性グループをあちらこちらで見かけました。今年はエチオピア北部のティグライ紛争の終結後、初めてのアシェンダであったため、特に盛り上がったようでした。

新年2016年の幕開け

エチオピアの新年は1月ではなく9月であることは、以前のブログ(エチオピアは今日、何月何日?)でもお伝えしたことがあるので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。エチオピアで使われている暦は、普段日本や多くの国で使われているグレゴリオ暦(1年の始まりが1月)と異なります。東方正教会(ギリシャ正教)で使用されている暦と同じで1年が13ヶ月あり、グレゴリオ暦より7年8ヶ月遅れています。新年が近づく(グレゴリオ暦の)8月下旬になると、アディスアベバの街中が大変賑やかになります。ショッピングモールや小売店は、雨季が終わるこの時期にエチオピアでしか咲かないといわれる黄色のマスカル(Meskel)の花のモチーフや黄色の風船を使って華やかにデコレーションされます。街角で売られているマスカルの髪飾りをつけている女性の姿もよく見られます。日本のクリスマスの時期に街中が赤や緑でデコレーションされるのと似ている感じです。人々は、新年のための新しい洋服やご馳走の材料を買うのに大忙しのようで、街中は人手が多くなり、また物価も少し高くなります。


グレゴリオ暦の2023年9月12日、エチオピアは新年2016年を迎えました。新年当日は、エチオピア人は家族と一緒に家で1日過ごすことが多いようで、いつも人通りが多く車の渋滞が多いメイン道路は人も車も少なく、アディスアベバ市内は1年で一番静かな1日だったように思います。多くの家庭では、エチオピア料理のご馳走であるドロワット(Doro Wat)という、鶏肉とゆで卵を伝統的な香辛料バルバリ(Berbere)で煮込んだシチューを食べてお祝いする習慣のようです。

  • マスカル祭りと生肉のご馳走

    9月28日は新年よりも大きなお祝い事であるマスカルの祝日です。エチオピアで半数以上の人が信仰するエチオピア正教の大切な行事であるマスカルは、イエスが磔(はりつけ)にされた真の十字架の発見を祝うためのお祭りです。マスカルについては過去のブログで触れていますので、こちらもご覧ください。

    エチオピア9月の新年とマスカル祭 »


    マスカルのお祝いには、生肉を食べることが多いようです。ホープ・エチオピアのアディスアベバ事務所で会計を担当するエマベットさんは、大の生肉好きです(写真)。生肉はお祝いの時に限らず、少し贅沢な食事としてエチオピアでとても人気のあるメニューで、特にアディスアベバでは至る所に生肉のレストランを見かけます。エマベットさんも月に一度は家族で生肉を食べにレストランに行くとのこと。かたまりのまま提供されたお肉を指で挟みながら器用にナイフで切って、香辛料たっぷりの辛いタレにつけてインジェラ(エチオピア代表的な主食で酸味のあるクレープのようなもの)と一緒に食べるのが、美味しい食べ方のようです。私も何度か生肉を食べましたが、「コクあるマグロのお刺身」のような味で、食べれば食べるほど美味しいと感じます。


    ただし、エチオピア人ですら生肉を食べてお腹を壊すことがよくあると聞きますので、食べ過ぎには注意が必要です。

    80以上の民族が暮らし、アフリカの中でも独特な文化を守りながら暮らすエチピアの人々。ご紹介したアシェンダはエチオピア北部に住むティグライ人の文化であるため、ホープの事業地である南エチオピア州 では見ることができません。逆に、エチオピア南部ではマスカルが1年の最大行事で、新年の日ではなく、マスカルの日を新たな年の始まりとしてお祝いするとのことです。ホープの事業地である農村部の人々にとっては、生肉は高価のため普段滅多に食べられませんが、マスカルの日には各家庭で牛やヤギを屠(ほふ)って家族でお祝いするそうです。民族が多いからこそ紛争が起こるという難しい面もありますが、それぞれの地域の文化を大切に守りながら暮らしているエチオピアの人々が、2016年も幸せに平和に暮らせるよう願うばかりです。


    <Reference>
    https://absoluteethiopia.com/

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