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女性が輝くとコミュニティが変わる

HOPE-JP • Mar 17, 2024

エチオピア水からはじまる自立支援3年の成果

エチオピア水からはじまる自立支援3年の成果

2021年2月から3年間に渡って実施された「オイダ地区における住民参加型水供給事業を通じた女性の自立支援事業」が、2024年1月末無事完了しました。

今回は、事業開始時と終了時の調査の結果を比較しながら、事業の成果についてご報告したいと思います。

安全な水へのアクセス

事業開始前、女性たちは背中に10Lほどのポリタンクを担いで、自宅から1時間以上離れた小川や沢まで凸凹して滑りやすい山道を歩いて水を汲んでいました。小川や沢の水は牛などの家畜の糞尿、生活排水、さらには人の排泄物などが混入した、飲料水としても生活用水としても水質が適切でないものですが、事業地で唯一の水源でした。また、水汲み労働は女性たちの1日の生活時間も体力も奪う、負担のかかる家事でした。特にカレ・マロ郡では夜中1時に起きて1時間かけて小川まで歩いて行き、2時間順番待ちをしてまた1時間かけて水を担いで自宅まで戻ったときには朝6時になっているという生活をしている例もありました。

本事業により合計8ヶ所の水源から8基の貯水タンク、55ヶ所の給水所を設置した結果、約12,000人の住民に安全な水を届けることができました。水汲み場所までの片道時間は、事業開始時の1時間〜1時間半から事業終了時の30分以下へと大幅に減少し、水汲み量も1日平均20-30Lから30-60Lへと増加し、住民の水へのアクセスを顕著に改善することができました。また、家庭用トイレの設置世帯数は、事業開始時の7%から事業終了時の100%となり、水供給施設の建設と同時に実施した保健衛生教育活動の成果も確認できました。

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小規模ビジネスと生活の改善

水へのアクセス向上と同時に女性の自立支援にも取り組みました。ホープでは、エチオピア・インドなどの後進国で実績があるSHG(Self-help Groupの略で女性の自助グループ)アプローチを取り入れました。SHGアプローチは、コミュニティの女性20名が1つのグループを形成し、①毎週の集金によるグループ貯蓄、②貯蓄を活用したローン、③ローンを活用した収入創出活動(小規模ビジネス)の3つの活動を推進することにより、女性個人の起業と収入向上の支援を通じて、家庭およびコミュニティの生活を向上させることを目的としています。ホープは、3年間で46のSHGの発足、920名のSHGメンバーの収入創出活動を支援し、SHGの上位組織である5つのSHG協同組合(CLA)、SHGおよびSHG協同組合を取りまとめる女性連合会の設立も支援しました。

SHGアプローチの研修を通じてローンや小規模ビジネスの始め方などのビジネスマネジメントについて学んだ女性たちは、最初は少額からローンを開始して、野菜やコーヒー、穀物などの食料の仲買や、ヤギ・ヒツジなど家畜の肥育などの収入創出活動に取り組みました。また、SHG協同組合は、女性のみならず男性も巻き込んだコミュニティ全体の活動として穀物の仲買などのビジネスを展開するようになり、コミュニティの結束力の向上と発展に役立っています。

徐々にローンの金額を増やしてビジネスを拡大した結果、女性たちは月平均500-3,000エチオピアブル(約1,300-7,800円)の収入を得て、家計を支える重要な役割を果たすようになりました。世帯平均年収は、事業開始時の500-1,000ブル(約1,300-2,600円)から、事業終了時の5,000-20,000ブル(約13,000-52,000円)に大幅に増加しました。また、女性(妻)が家計の大黒柱であるという世帯は、事業開始時の2%から事業終了時の65%に変化し、1日の食事回数も多くて2回という生活から、毎日3回という生活に改善されました。家計が改善したことで小学校を中退した子どもたちが復学したり、また母親が小学校に復学したりという嬉しいニュースも聞きました。

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女性のエンパワメントとコミュニティの発展

事業を通じて女性の立場にも大きな変化が起こりました。事業開始前は、女性は男性の前で自分の意見を述べたり、世帯の収入・支出に口出ししたりすることはできず、また女性だからという理由からコミュニティ内で身体的または言葉の暴力を受けることが多く、女性の地位は低いものでした。しかし、SHGアプローチを通じてビジネススキルのみならず、コミュニティ開発における女性の権利や役割についても研修を受けた女性たちはどんどん自信をつけ、コミュニティの中で発言したりリーダーシップをとったりと活躍するようになりました。

小学校に復学し学年トップの成績を収め表彰されたSHGメンバー

小学校に復学し学年トップの成績を収め表彰されたSHGメンバー

また、女性の収入により家計が向上すると、男性たちの心境にも変化が見られました。事業開始時には女性が研修やビジネスで家を空けることをよく思っていなかった男性も、家計向上による生活の改善を実感して、今や自ら水汲みや家事・子どもの世話を買って出て、女性の収入創出活動を後押ししています。


アンケートでは、事業開始後は、女性が食費や教育費などの支出を決定することができるようになり、コミュニティでは男性と肩を並べて発言し、差別を受けることはなくなったという結果を得ました。

本事業を通じて、ホープは水の供給システム設置とSHGアプローチを同時に実施することによる相乗効果を実感することができました。水供給システム設置により女性たちの水汲み労働の負担を軽減するとともに女性に収入創出活動の機会を提供することで、介入を効率的に実施できました。また、これまで農村部において日の目を見ることなかった女性たちにSHG活動に参加してもらうことで、女性たちはまさに水を得た魚のごとく瞬く間にビジネススキルを習得し、経済的にも精神的にも自立することができました。女性たちの躍進の刺激を受けて、男性も一緒になりコミュニティ開発に積極的かつ自立的に取り組むようになりました。事業引渡式で州政府の役人に対して力強くコメントを発言する女性の姿は、事業の成功を物語っているようです。事業地の住民は、ホープの支援終了後も自らの力で水供給施設の維持管理とSHG活動を継続していくと力強く語ってくれました。

改めまして、みなさまからのご支援と外務省の助成により3年間の事業が無事終了したことを感謝申し上げます。

ホープはこれからもエチオピアで、支援の届いていない人々の自立への道筋を支援していきます!

ホープの活動は、皆さまからのご寄付に支えられています。

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